訃報

kuroken2006-08-30

宇宙旅行の真っ最中だった8月3日、元講談社編集者の宇山日出臣さんが亡くなった。
中学時代、宇山さんが編集していた雑誌「ショートショートランド」で創作の面白さを知り、大学時代、宇山さんが仕掛けた「新本格ミステリ」でその世界にはまり込み、そして宇山さんに認められてメフィスト賞を受賞し、作家デビューを果たした僕。
デビューしたとき、「これで人生が狂っても責任は持ちませんよ」といわれたが、その前から僕は宇山さんによって人生をコントロールされていたような気がする。
宇山さんに出会っていなければ、おそらく作家にはなっていなかっただろうし、もしかすると読書好きにさえなっていなかったかもしれない。


8月4日。いつものようにベッドの上でネットを徘徊しているとき、知り合いの作家さんのサイトで訃報を知った。
6月に行なわれた本格ミステリ大賞のパーティーで元気そうなお姿を拝見したばかりだったので、しばらくは信じられなかった。
ブログにはなにも書けなかった。起き上がれないという特殊な状態で、大切な人の訃報を書き記せば、ますますつらくなることは目に見えていたからだ。


告別式は11日に行なわれたが、ベッドの上を離れられない僕は、弔電を送ることしかできなかった。
ちょうど、宇宙旅行も半ばにさしかかった頃である。
やりきれなかったが、どうしようもない。
宇山さんの星を訪ねるために、僕はこの旅行に参加したんだ──そう思うことにした。


宇山星はとても大きく、とても厳しく、そしてとても暖かかった。
「これで人生が狂っても責任は持ちませんよ」
赤ら顔でそう口にする宇山さんに、今なら自信を持ってこう伝えられる。


人生を狂わされたこと、本当に感謝しています。


……ご冥福をお祈りいたします。