事前測定最終日

kuroken2006-07-30

僕らの測定をしてくださっている先生がたから、こんな話をうかがいました。
「ベッドレスト実験は、過去にも何回か行なっているんだけど、そこで毎回カップルが誕生してるんだよねえ」
「ええ? そーなんですか?」
測定の疲れなどどこへや、途端に色めき立つ我々被験者たち。
「それはつまり、僕らの世話をしてくれる看護学生さんと、いつの間にか恋仲になって……」
「いや、そうゆーことじゃなく、研究者同士がカップルになることが多いんだ」
「なんだ、そーゆーことですか。では、これまでに被験者と看護学生が恋に落ちた割合は?」
「(きっぱり)ゼロです」
潮がひくかのように、元気をなくす我々。
……ま、そりゃそうだわな。
24時間、ごろごろ寝転がっているだけの僕たちを見て、恋に落ちるはずもありません(苦笑)。


そんなこんなで、ついに事前測定最終日。
明日、いよいよ宇宙旅行へ旅立つことになります。
まずは、一昨日失敗したtilt試験をもう1回。これはやっぱりツライ。何度やっても慣れることはありませんね。宇宙旅行のあと、もう一度やらなくちゃならないかと思うと、今からちょっと憂鬱だったり。
続いて、心臓エコー検査。途中で眠ってはいけない測定が多かった中、これはどれだけ寝てもOKだったので、思わず爆睡しちゃいましたよ。幸い、心臓に異常は見つかりませんでした。
そして、最後に残されたのが、いかにも宇宙旅行らしい耐G測定。遠心回転装置(写真)に横たわり、ぐるぐると回されながら、どれだけのGに耐えられるかを測定します。
目が回ってしまうのを防ぐため、ゴーグルを着用。全身をシートベルトでしっかりと縛り付け、さあスタートです。
うわあ。回ってる、回ってるよ。目隠しをしていても、回ってることは感覚でわかります。
まずは1Gで10分間。
1Gといったら、地上生活となんら変わりありませんが、これは心臓の位置にかかっている重力。遠心力というのは、回転の外側ほど大きくなりますから、下半身にはもっとたくさんのGがかかります。
誰かに思いきり足を引っ張られているような感覚。無理矢理ストレッチをしたときみたいに、太ももの裏の筋肉がピンと伸びて、あ痛たたたたっ。全身が重くなり、腕を持ち上げようと思っても、うまくいきません。
真横になって回っているはずなのに、上半身が起き上がって斜めの角度で回っているような感じになってきます。これも回転の外側ほどGが大きくなるため、そのような錯覚を起こすらしいんですが、僕の頭では、ほとんど理解できてません(恥)。
10分が経過して、1.2Gに上昇。あとは5分刻みで、0.2Gずつ上がっていきます。
たいていの人は1.4Gあたりで気分が悪くなりギブアップとなるのですが……僕は1.2Gを3分ほど経過したところで、一気に吐き気が襲いかかってきて終了。tiltのときと同じように、頭から血がに下りていくような感じがあり、そのまま気を失いそうになっちゃいました。うう……この気持ち悪さは、あんまり体験したくないなあ。
「セントリフュージョンと呼ばれるこの遠心機――宇宙旅行中にもトレーニングができるよう、エアロバイクが取りつけてあります。なんと世界にこれ1台しかないという貴重なもの。
レーニング群に振り分けられた僕は、明日からの20日間、イヤでもこの遠心機に乗り続けなければならないんですが……果たして、大丈夫なんでしょーか?


これにて、すべての測定が終了しました。
宇宙旅行に入る24時間前から、出た尿はすべて容器に貯めていかなければならないため、今日からは病院に宿泊。
おしっこの入った容器を持ち歩くのは、最初ちょっぴり恥ずかしかったんですけど、続けるうちにすっかり慣れちゃいました。むしろ、「ねえ、見て見て」と誇らしげに見せびらかしていたくらいです(笑)。
さて、今夜はおしっこの貯まった容器を片手に、地球最後の夜を楽しむことにしましょう。