事後測定3日目

kuroken2006-08-22

地球に到着してから、もうすぐ48時間が経過します。
足もとのふらふらした感じは完全になくなりました。
その代わりに、背中、腰、太もも、ふくらはぎ――すべてが筋肉痛
立ち上がったことで、一気に筋肉に負担がかかったんでしょうね。
とはいっても、それほど強い痛みではないので、とくに不都合は感じておりません。
でも、今こそケアスタッフに、あちこちマッサージしてもらいたい気分。
よーし、頼んでみるか。
「ねえ、マッサージして――」
「ベッドレストが終わった人はダメです」


まったく相手にされませんでした(涙)。


昨日に引き続き、立ち上がってみて気がついたこと。


その5。
ベッドレスト中は全身に電極をつけ、様々な測定が行なわれました。腰のあたりにも電極を貼りつけなければならないため、測定のたびにパンツをずり下ろされていた僕。
そのときはなにも感じなかったんですが、宇宙旅行が終わったあとに同様のことをされたら、なんだかムショーに恥ずかしかったです。
普通の生活に戻った途端、恥じらいが生まれましたよ。
たぶん、「今からベッドの上でうXこをしろ」といわれても、恥ずかしくてできないと思います。
ほら。「うXこ」って文字も、伏せ字になっちゃってるでしょ。


その6。
うXこネタばかりですみません。
僕、一度に大量のうXこを出すことがなぜかできなくって、1日に6回くらい排泄してるんです。それが、ベッドレスト中はモリモリとうXこが出て、1日2〜3回ですんでいました(それでもほかの人に較べれば、充分多いんですけどね)。
しかし、立ち上がった途端、ベッドレスト前の状態に戻っちゃいましたよ。
これは、どーいった理由からなんでしょうね?


そんなこんなで、事後測定3日目。
今日は名古屋大学へ車で移動して、NIRS測定とVo2max測定。さらに大垣へと移り、MRIの撮影。事前測定1日目とまったく同じスケジュールです。「NIRSってなに? Vo2maxって元スーパーモンキーズのこと?」と首をひねられているかたは、7月25日、26日の日記をご覧ください。
愛知医科大学病院の敷地内から出るのは、7月30日以来、実に23日ぶり。ひさしぶりの娑婆です。そりゃ、心も躍ります。
いつも着ているユニフォーム姿で、しかも片手には安楽尿器を抱えているので、外を出歩くのはちょっと恥ずかしかったですけど、それでもひさしぶりの外出の誘惑には勝てませんでした。測定の空き時間を利用して、あちこち散歩しまくり。
そして、昼食はコンビニのお弁当♪
宇宙ステーションの食事には、正直、飽きてきていたので、ひさしぶりの外食(?)に心ウキウキ。不思議なことに、ベッドレスト中は「もっと、あっさりしたものが食べたい」と思っていたんですが、起き上がってみると、なぜか味の濃いものが食べたくて仕方がありません。焼きそばにしようかな、ラーメンにしようかな、焼き肉丼にしようかな♪ とさんざん悩んだ結果、定価490円のビーフカレーを食べました


美味しいよ。
涙が出るくらい、美味しいよ。


宇宙旅行中は甘いものもほとんど食べられなかったので、生クリームがたっぷりのったプリン(105円)も購入


うあああああ。
うめええええええ。


合計595円の安い昼食でしたが、値段なんて関係ありませんね。
あと1日我慢すれば、どんなものでも自由に食べられるんだあ。
そう思うと、今からわくわくします。
……ああ、「出前一丁」がムショーに食べたい。


さてさて、本日の測定結果です。
筋力はわずかに衰えていましたが、エアロバイクによる最大酸素摂取量は増加しておりました。
毎日、トレーニングを続けた効果ですね。
限界までエアロバイクを漕いで、へろへろになりましたが、気分も悪くならず、足もともしっかりしていたので、「この分なら、もう走ったりしても大丈夫」と自信がつきました。
さあ、明日はついに最終日。
家に帰ったら、熱い味噌汁が飲みたいです。
……1ヵ月近くを過ごしたこの場所を去るのは、ちょっと寂しくもありますが。

事後測定2日目

kuroken2006-08-21

本日の写真は、42℃のお湯に1時間ほど足を浸し、発汗量を測定する実験を行なったあとの僕の足。お湯に浸かっていた部分が、真っ赤っ赤になってます。


……突然ですが、叫ばせてください。


幸せだあ〜♪


昨日の夜からずっと、幸福感に包まれています。
枕を使って眠れる幸せ。
好きなときに身体を起こせる幸せ。
歩ける幸せ。
ベッドレスト生活もそれなりに快適でしたけど、こうやって自由に行動できるようになると、「やっぱり、寝たままの状態ってのはつらかったんだなあ」とわかります。好きなときに、どこへでも移動できるっていうのは、ホント大きな幸せです。
20日ぶりに立ち上がってみて、気づいたことがいくつか。


その1。
声が小さくなりました
ベッドレストのときは、自分でも「俺、ちょっとうるさくないか?」と思うほど、声が無駄にでかかったんですよね。だけど、立ち上がってから普通のボリュームに戻ったような……。
気分があんまり優れないときも、大声でしゃべっていると、なんとなく楽になれたんです。寝たきりだと、ストレスの捌け口がまるで見つかりませんから、たぶん大声を出すことでストレスを発散していたんでしょうね。トレーニングのあとは必ず気分がすっきりしたのも、同様の理由だと思います。


その2。
寝たままの状態で見える景色って、ホント限られてるんですね。
立って初めてわかりました。20日間、ずっと過ごした部屋なのに、「あ。こんなところに、こんな張り紙があったんだ」「へえ。ここに、こんなものが置いてあったんだ」と今まで知らなかった風景をいろいろと発見。
あと、僕自身の風貌も、寝ているときと立ったあとではかなり違って見えたみたいです。
「ええ? ホントに黒田さんですか? 誰かわからなかったです」と、ケアスタッフの人に驚かれたくらいですから。血液が下に下がり、顔のむくみがとれたため、寝ていたときよりも痩せて見えたんでしょーか?


その3。
座った状態で口にする20日ぶりのご飯。
いつもの「まったく味がないおにぎり」を頬張ると……あ、味がある
これには驚きました。たぶん、今日だけ塩加減が多かったってことはないと思うんですが。
寝たきり状態だと味覚にまで変化が生じるんでしょーか? そう思ってご飯を味わってみると、確かにいろんなものの味付けが、いつもより濃く感じるような。
ベッドレスト中は、「うーん、あんまり美味しくない食事だなあ」と思ってましたけど、これって食事のせいではなく、僕の身体のほうに原因があったのかも……。


その4。
地球到着から12時間後の身体測定では、なんと身長が1.2センチも伸びていました
うわあ、すげえ。重力の影響がないと、そんなふうになっちゃうんだあ。「ふふ。背が高くなってモテモテ?」とか思いましたが、すぐに縮んじゃうそうです。残念。
当然ながら、全身の筋肉量は落ちていましたが、それ以上に脂肪が落ちていたことに、またまたびっくり。


体重 74kg → 70kg
体脂肪率 21% → 20%
ウェスト 86cm → 82cm


ベッドレスト生活って、ダイエット効果抜群ぢゃん。


いや、酒も飲まず、間食もせず、毎日運動をしていたら、これくらい痩せるってことなんですね。うーん、このままの状態を維持したいなあ。


朝食後、車で研究室へ移動。
今日からの測定は比較的楽なものばかりなので、気持ちもずいぶんと落ち着いています。
足取りも昨日に較べて、格段によくなりました。まだ、カメのようなのろまな歩みですが、もう、あんまりふらつくこともありません。
試しに、研究室まで階段を使ってみたんですが、うおおおおお、足もとだけ重力が大きいような妙な感じ。やはり、筋力は衰えているんでしょう。
しかし、時間の経過と共に確実に回復していくのがわかります。午後には、普通のスピードで歩けるまでになりました。
実験が終わったあとは、車に乗らず、歩いてベッドのある部屋まで帰還。階段も、ゆっくり歩けば、とくに問題ありませんでした。


あ、そうそう。
今日は20日ぶりにお風呂に入りましたよ。
ひげも剃ってサッパリ。
もう一度いわせてください。


幸せだあ〜♪

着陸〜事後測定1日目

kuroken2006-08-20

ついに、地球着陸の日がやって来ました。


……とはいっても、ベッドから起き上がって「はい、到着」なんていう生やさしいものではありません。本当の宇宙旅行が着陸にもっとも気をつかうのと同様、この実験も着陸時が実はもっともハードなんですよね。


午前9時。
ストレッチャーに移し替えられ、宇宙ステーションの外へ。うわあ、太陽がまぶしいよ。
ここから、測定の行なわれる研究室へワゴン車で移動です。ストレッチャーごと車に乗せられるのだとばかり思っていたのですが、普通のワゴン車なのでそんな装備がついているはずもなく、


「すみません。自力で荷台へ乗り込んでください」


……そうだよな。べつに病人じゃないんだから。
腹這いで、ずりずりずりと車へ移動し、荷台に敷かれた布団……ではなく、段ボールの上へ寝転がる僕。
車に揺られること約1分――同じ敷地内ですから、あっという間です――で、研究所棟に到着。そこで再びストレッチャーに移し替えられ、事前測定でお世話になった研究室へ。
地球へ降り立つためには、ふたつの関門をクリアしなければなりません。事前測定でも行なったtilt(起立負荷試験)と耐G測定です。
なんじゃ、そりゃ? と首をひねられたかたは、もう一度7月28日〜30日あたりの日記をご覧ください(tiltの写真、追加しました)。その過酷さがわかると思います。とくに、事前測定のtiltでは、かなりツライ思いをしましたから、その記憶がよみがえってきて、鬱な気分に。でも、それらの試練を乗り越えなければ、地球に帰還することはできません。やるっきゃない!
予定では先にKさん、そのあとに僕がtiltを行なうことになっていました。しかし土壇場で変更があり、僕が先にやることに。
うわーい、ラッキー。イヤなことは早く済ませてしまいたいもんね。
ってなわけで、午前10時にtiltスタート。順調に進めば、午後1時には終了するはず。そのあと耐Gに若干時間がかかったとしても、夕方までには帰還できるだろうと、頭脳コンピュータが弾き出しました。


しかし。


tiltが始まって2時間ほど経過したところで、突然機械の調子が悪くなり、測定は途中で中断。
「仕方がありませんね。体力も消耗しているでしょうから、Kさんの測定を先に行なって、そのあとでもう一度やり直しましょう」


あああああああああああ。
ここまで頑張ったのにいいいい(号泣)。


うう……。どうして? 僕がなにをやったっていうんだよおおおお(涙)。
と泣いてみたところで、どうしようもなく、Kさんのtiltが終わるまで、簡易ベッドの上でゴロゴロ。


tiltでは、ベッドが15分刻みで、マイナス6度、0度、30度、60度の角度に動きます。
ただでさえ低血圧発作の起こりやすい実験なのに、20日間寝たきり状態だったところへいきなり60度まで起こされるわけですから、失神する可能性大。イヤでも緊張感が高まります。
「お願い、楽に終わって!」と神頼み。仲の良い友人に、「無事、地球へ帰還できるように祈っててね」とメールまで送ったり。
結局、僕の測定は午後6時過ぎからになってしまいました。
緊張と不安に押しつぶされそうになる中、ついにベッドが60度へ。
20日ぶりの起立姿勢です。
うわあ、イヤな汗が流れてきたよ。やばいかもなあ。
気をしっかり持たなければと、目の前の景色をひたすら睨み続ける僕。
しかし1分も経つと、イヤな汗もひいていきました。よっしゃ。これならなんとかなるかも。
腕からは血を抜かれ、膝の裏には筋交換神経活動を測定するが刺さっています。その痛みで一気に血圧が下がることもあるので(とにかく僕はヘタレなので)、それらのことはできるだけ考えないようにして、ただただ壁を凝視。
60度姿勢の15分間は、永遠かとも思えるくらいの長さでした。
でも、気力でなんとかクリアして最大の難関tiltを終了(万歳!)。
終わったときには、すでに午後9時を回っていました。


さあ、残るは耐G測定です。これが終われば、晴れて立ち上がることができます。まさに、大気圏突入といった感じ。
またまたストレッチャーに乗せられ、いつもの宇宙ステーションへ帰ってきました。
毎日トレーニングを続けてきた遠心機に運び込まれる直前、携帯電話に友人からのメールが。てっきり励ましのメールかと思ったら、


今、NASAから入った情報によると、黒田氏の乗ったスペースシャトルが大気圏突入と共に消滅! ♪ずっと忘れない〜


このタイミングで、
そんなメール送ってくるなよ(-_-)


「うわあ。大気圏で燃え尽きちゃったらどうしよう?」とうろたえながら、耐G測定スタート。
耐G測定では、普段のトレーニングみたいにペダルを漕ぐことはできません。そのため、心臓に戻る血液の量が減り、Gには耐えにくくなります。
とにかく精神力だ! と思い、頭の中でひたすら自分がペダルを漕いでいる姿をイメージしました。そのことが功を奏したのか、事前測定のときよりもかなり楽な感じ……。いや、耐えられたのは結局、1.2Gまでなんですけどね。でも、前回は失神直前状態でストップしたのに対し、今回は少し余裕を持って終えることができましたから。


終わったあああああっ!


遠心機が止まったときには、思わず叫んじゃいましたよ。


さあ、ついに立ち上がるとき。
たくさんの先生やケアスタッフに囲まれ、まずは上半身を起こします。
……うわあ、くらくらするよ。
風邪で高熱を出したときみたいな感じ?
頭の中がぐわんぐわんと音を立てて揺れてるような……。
肩を支えてもらいながら、ゆっくりと地面に足をつきました。
ををををを。
ふらふらする、ふらふらする〜。
このあと、平衡感覚を確かめる測定を行ないましたが、目をつぶると右へぐらぐら、左へぐらぐら。酔っぱらいでもここまでふらつかないだろうって感じになってたみたいです。
多少、気持ち悪くもなりましたが、それはほんの数十秒で治まりました。驚いたことに、ぐわんぐわんと揺れていた頭の中も、時間の経過と共に少しずつ治まっていきます。もっとふらふらした感じが続くのかと思いましたが、本当にわずかな間のことなんですね。
しかし、歩くとやっぱり身体がふらつき、なんだか妙な感じ。
「今夜は必要以上に歩かないこと。歩くときもゆっくりと」と、指示を受けましたが、歩けることがメチャクチャ嬉しくって、ついつい意味もなくベッドと廊下の間を往ったり来たり。よたよたでしたけど。


なんだか、ものすごい幸福感♪


ただ、立って歩いてるってだけなのに。
すでに消灯時刻を過ぎていましたが、このまままた寝てしまうのがもったいなくて、結局、午前2時近くまでうろうろよたよたしていた黒田なのでした。


8月20日午後11時34分。
無事、地球へ帰還。

帰還前夜

kuroken2006-08-19

今日の1枚は、僕と同じ日に宇宙へ旅立ったKさん。
ベッドの傾き、わかってもらえるでしょうか?


地元の花火大会らしく、外からは花火の打ち上がる音が聞こえてきます。
……でも、見えないよ(涙)。
宇宙旅行もついに20日目。
つらかったトレーニングも、ようやくすべて終了です。
あとは、明日の大気圏突入を待つだけ。
明日、Kさんと一緒に地球へ帰還します。


ベッドの上で腹這いになりながら綴る日記も、これが最後となります。
毎日、不自然な姿勢でタイピングしていたので、肩や背中の筋肉がガチガチです。
ケアスタッフの皆さんの手厚いマッサージでなんとか耐えてこれましたけど、もう二度とこんな姿勢でパソコンを使いたくはありませんね。
さてさて、今日はこれまでに紹介できなかったネタを、まとめてざっとご紹介。


▼大人のDSトレーニング
ベッドレスト中は毎日、「もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」をやっていました。大体、脳年齢20歳〜25歳くらいの間を行ったり来たり。寝ていたから脳の働きが衰えたとか、逆に冴えまくったとか、そんなことはあんまりありませんでした。


▼夢
ひたすら、街なかをほふく前進し続ける夢を見ました。その世界では、すべての人がほふく全身しているんです。横断歩道を渡るときも、信号が青になると同時に、皆がいっせいにずりずりずりずりと腹這いになって進んでいきます。……ちょっとうなされました。


▼……え?
ベッドに貼ってあったメモ。面会に来た友人に指摘され、初めて気がつきました。



170kgって……。そこまでデブじゃないやい!


▼熱い口づけ
安楽尿器のレシーバー(おしっこを受け止めるところ)は、ベッドの横に引っかけて置いてあります。同じくベッドの横に置いてある体温計を取ろうと、うつ伏せ状態でベッドから顔を出したところ……安楽尿器のレシーバーに熱い口づけ。しばらく悶え続けたのはいうまでもありません。


▼ナースコール
ナースコールは全員がひとつの回線を使用しているため、誰が鳴らしたかまではわかりません。そのため、ケアスタッフがやって来たら、「僕が鳴らしました」と申告する決まりとなっています。
ピピピピピ……
「はい。どなたですか?」と尋ねるケアスタッフ。しかし、誰の応答もありません。
しばらく経って、またピピピピピ……
「どなたですか?」
でも、やっぱり応答はなく……。
ええ? どゆこと? どゆこと? まさか……。
「お盆だからねえ」
そのひとことで片づけられてしまったんですが、果たしてそれでよかったんでしょーか?


▼排泄
ベッド上の排泄にもすっかり慣れてしまいました。どちらかといえば、おしっこのほうがいまだに苦労しますね。普段よりも腹筋に力を入れなくちゃならないんで。
しかし、こんなにも抵抗なく人前で排泄できるようになっちゃうと、たとえば今後、酔っ払ったときとかに、つい調子にのって、「じゃあ、今からうんこしまーす」とかやっちゃわないだろうかと、ひじょーに心配です。


明日は事後測定が忙しく、おそらくブログの更新はできないと思います。
では次回、地球でお会いしましょう。
無事、着陸できるよう、皆さん、祈っていてくださいね。

性欲

kuroken2006-08-18

今日の写真は、「なにを書いてくれてもいいですよ」とケアスタッフに手渡された大学ノート。
毎日、メモ代わりに思ったことをつらつらと書き綴っています。
これを読んだ友人には、「小学生の作文か」と笑われたけど。
文字が汚いのは、寝たまま書いているからです。ホントはもっと綺麗なんですよ(必死で言い訳)。
このノート、ケアスタッフの皆さんがコメントを書き込んでくださるようになり、交換日記帳と化してます。毎日、若い女の子たちにマッサージしてもらい、しかも交換日記までできちゃうなんて、この先、もう絶対にあり得ないシチュエーションですよね。うーん、しあわせ♪


僕より1日早く宇宙へ旅立った先輩パイロットの2名が先ほど、最後のトレーニングを終えてステーションへ戻ってきました。彼らは明日の朝、地球へ帰還します。
ただし、すんなりと起き上がれるわけではなく、20日前に行なったあの超ハードな測定を、再び受けなければなりませんが……。
僕も明日が最終トレーニング。明後日の朝に地球へ降り立つ予定です。


さて。
今日の話題は、タイトルからもわかるように、またもやシモネタです。しかも、生々しいです。だけど、やっぱり語っておかなくっちゃ。
……苦手なかたは読み飛ばしてください。
皆様からいただいたメールの中で、飛び抜けて多かった質問は、


「性欲はどうやって処理しているの?」


……そりゃ、気になりますよね。
僕も宇宙へ旅立つ前は、その点がずいぶんと不安でした。
ベッドレスト生活に入る前に、思う存分××しておこう――と思ったんですけど、事前測定が想像以上にハードで、そんな暇はまったくナシ。結局、普段以上になにもせぬまま、宇宙生活へと突入しちゃいました。
……ってなわけで、もう3週間以上、そのまんまの状態。こんなの初めての経験です。
日々、悶々としているんじゃないかと、心配してくださるかたも多いんですが、不思議なことに、まったくそーゆー気は起こりません。ホント、聖人になった気分。
「絶対にできない環境」ってわけじゃないんですよ。排泄のときは下半身を丸出しにしているし、「ううん……あうう」と声を出して力むこともあるから、まずばれることはないと思います。ティッシュも消臭剤もちゃんと用意してあるし、みんなからもらったオカズ本だって山ほどあるし(笑)。
やるのが恥ずかしいってわけでもありません。だって、排泄だってベッドの上で平気でできちゃうんだもん。まあ、どっちが恥ずかしいかは人によって違うでしょうけど。
とにかく、性欲はゼロ。
やはり、寝たきり生活だとそーゆー部分も不健康になってしまうんでしょうね。昨日お話した「食欲があるのは、健康な証拠」ってことと同様、「性欲があるのは、健康な証拠」なんです。
今後は、丸めたティッシュを見つめ、「今日も性欲旺盛でよかった」と健康に感謝しちゃうかもしれません。


……今日、昼寝をしているときに、ちょっとエッチな夢を見ちゃいました。
ベッドレスト開始以降、初めての経験。
旅も終わりに近づき、ちょっとずつ元気になってきているのかな?
なんだか急に楽しみになってきたぞ。

宇宙での1日

kuroken2006-08-17

宇宙旅行も終わりに近づいてまいりましたが、いまだトレーニング前の体調はあんまりよくありません。身体はだるいし、食欲はなくなるし……。
でも、トレーニングが終わったあとは、いい汗をかいて全身がすっきりしちゃうんですよね。だから、午後からは快適、快適♪ この生活をずっと続けたいなと思っちゃうくらいです。
これまでは、過酷なトレーニングがストレスになっているんだとばかり思っていたんですけど、トレーニングをすれば気分がよくなるとわかって以降、逆にトレーニングを楽しみにしている自分がいます。となると、トレーニングがストレスになっているとは考えにくく、じゃあ午前中のだるさは一体なんなんだ? ってことに。うーん、どーゆーことなんだろう? よくわかりません。
たぶん、身体が「動き回りたい!」って訴えてるんでしょうね。だから、じっとしていると次第に気分が悪くなってきて、逆に汗をかくとすっきりしちゃうんだと思います。
……この生活も残りわずかです。
ようやく終わるぞという安堵感と、もう終わっちゃうのかという寂寥感が、ごちゃ混ぜになって僕の身体の中で暴れております。


さて。
「毎日、暇じゃないの? 一体、なにやってるの?」という質問を多数(2通だけど)いただきましたので、今日は1日のスケジュールを簡単にご紹介いたしましょう


06:00 起床、採血
午前6時に宇宙ステーションの照明は灯りますが、それで目覚めることはほとんどありません。ケアスタッフの「採血、よろしいでしょうか?」の言葉でようやく起床。
毎日、血を採られるため、僕の腕は注射針のあとでいっぱいです。この風貌で平日の昼間から街なかをふらふら歩いていたら、絶対に「怪しい奴だ」と疑われるでしょう。地球に帰還したら、充分気をつけないといけません。
採血のあとは、再度うつらうつらと夢の中へ。あるいはテレビでニュースチェック。「めざましテレビ」の占いカウントダウンも見逃しません。


08:00 バイタルチェック、朝食、口腔ケア、口腔温チェック
ケアスタッフに腋下体温と血圧、脈拍数を測ってもらい、そのあと朝食。ご飯は3食とも食べた量をチェックされます。朝食に出てくるおにぎりは、味が薄くて、正直あんまり美味しくない……(ぼそり)。
食事のあとは口腔ケア(いわゆる歯磨き)。洗面器と水の入った紙コップ2杯を手渡されます(写真)。1杯はうがい用。1杯は歯ブラシ洗浄用。うつ伏せになったまま紙コップの水を口に入れるのは難しいため、ストロー大活躍。ストローを使ってうがいするなんて、もちろん初めての経験でした。
そして、口腔温チェック。小数点以下第2位までわかる基礎体温計を使い、舌の裏で測ります。これは消灯時刻まで2時間おきに測定。結構、忘れちゃうことが多いです(反省)。


09:00 排泄
僕の場合、朝ご飯を食べて数十分で便意をもよおします。しかも、一度に全部を出しきるんじゃなくて、3回ほどに分けて出てくるんですよね。まったく面倒な身体です(笑)。準備にも排泄にも後始末にも時間がかかりますので、毎日1時間くらいはうんこと闘ってるかも。
うんこの合間にはテレビ観賞。ときには、便器をお尻の下にあてがったまま、ワイドショー見てます。


10:00 体重測定
ストレッチャーに乗せられ、体重計の置かれた場所へ移動。もちろん、横になったままの測定です。着衣で誤差が出てしまわぬよう、全員に同じ下着とウェアが用意されており、僕らはそれを着て、毎日を過ごしております。
10時過ぎから順番にトレーニングがスタート。トレーニングに要する時間は一人あたり60〜90分。回ってくる順番は日によって変わります。早ければ午前中に終わりますが、遅いと夜7時くらいになっちゃうことも。
レーニングが始まるまでの時間が、一番苦痛なんですよね。なにをやっても集中できない感じで……。ってなわけで、トレーニングが始まるまではなんにもせずにごろごろしたり、音楽を聴いたり、雑誌を読んだり。


12:00 トレーニン
今日は正午にトレーニング開始となりました。実際に運動するのは30分ですが、準備や休憩を含めると1時間近くかかっちゃいます。
レーニングに関する詳しい説明は、過去の日記をご覧ください。


13:00 洗髪、清拭、マッサージ
レーニング後の幸せなひととき。今日はとくに念入りにやってもらいました。
ああ、幸せ♪ ケアスタッフとの会話が一番弾むのも、この時間です。


14:00 昼食、口腔ケア、昼寝
普段は正午に昼食をとりますが、今日はトレーニングと重なってしまったため、この時間に食事。いつも朝食と昼食の間隔が短いので、本当はこのくらいがちょうどいいんですが。
お腹いっぱいになったら眠くなって、そのまま夢の中……。


16:00 ネット徘徊
日によって違いますが、この時間帯にネットを徘徊することが多いかも。最近はもっぱら、漫画版「逆転裁判」の反応をチェックしてます(笑)。
皆さんが面会に来てくれるのも、この時間帯が多いですね。


18:00 バイタルチェック、夕食、口腔ケア
朝食前同様、腋下体温と血圧、脈拍数を測ってもらい、そのあと夕食。


19:00 自己診断チェック、ブログ更新
自分の身体の調子について、アンケート回答。
そのあとはのんびりとブログを更新したり、テレビを見たり、ゲームをしたり、たまーに読書をしたり(結局、まだ1冊も読み終わってません)。


22:00 消灯
でも、こんなに早く寝られるはずがありません。暗闇の中、ネット徘徊。


23:30 就寝
おやすみなさい。


これはあくまで本日のスケジュール。
レーニングの時間帯は日によって変わるため、いつもこのように行動しているわけではありません。
このほか、定期的にいろいろな測定が入ります。胃検診はお腹にコードをつけたまま、あまり身体を動かさずにご飯を食べなくちゃならないんで、ちょっとツライです。


その日の体調は、ご飯を美味しく食べられるかどうかですぐにわかりますね。
食欲があるっていうのは、健康な証拠なんだ――そんな当たり前のことに、今までほとんど気づいていませんでした。
これまで当たり前だと思っていた「美味しいご飯」に、これからは毎回、感謝と喜びを感じちゃうかもしれません。

お風呂に入れないと……

kuroken2006-08-16

以前も書きましたが、トレーニング後の洗髪&清拭&マッサージは至福のひとときであります。まさに南国リゾート気分。
今日もつらいトレーニングを終えて、リラックスルームへ(といっても廊下だけど)。
「シャンプーはどれを使いますか?」
「いつものヤツで」
「あ。今日から新しい商品が増えましたけど、それを試しに使ってみます?」
「新しいのってどれ?」
「これです」



ねえ、誰?
誰の髪の毛が気になったんですか?


僕? ねえ、僕なの?
僕の額は、生まれたときから広いんだってば(焦りまくり)。


……気を取り直して。
本日はさらに、ボディシャンプーで上半身を洗ってもらっちゃいました。
もう2週間以上、お風呂に入ってませんからね。いつもタオルで拭くだけですから、きっと身体もひどく汚れていることでしょう。
「タオルとか真っ黒になってません?」
と尋ねる僕。
「大丈夫ですよ。そんなに汚れてませんから」
「ホント?」
「ええ、綺麗ですよ……あっ」
突然、無言になる看護学生。
なに? 一体、タオルになにがくっついてきたの?
「大丈夫。綺麗ですよ」
笑いながら、手に持っていたタオルを捨てる彼女。
なんなんだよおお。
気になるじゃねえかああああ。


さて。
本日は、今回の宇宙旅行で発見したもっとも驚くべき事実をお話しいたしましょう。
一体なにかと申しますと……


お風呂に入れないことの恐ろしさ


なんです。
身体はいつも綺麗に拭いてもらってますから、「べとべとして気持ち悪い」とか「垢がぼろぼろ出てくる」とか、そんなことはないんですけど……。


それを発見したのは偶然でした。
毎日のトレーニングでもっとも痛くなる部分は、お尻なんですよね。体重のほとんどがサドルに集中するため、キ×タマと肛門の間――いわゆる蟻の戸渡りが赤く腫れあがってしまうんです。この宇宙実験に女性が参加していない理由はこれだ! と勝手に思い込んでおります(笑)。
あまりにも痛いもんだから、どれくらい腫れているのかちょっと見てみよう。……とは思ったものの、自分で見られるはずもなく、かといって誰かに見てもらうのも恥ずかしくてできません。
「じゃあ、写真に撮るか」
仕方がないのでパンツを下ろして大股広げ、自分のお尻をケータイで激写
ハタから見たら、ただの変態ですよね。でも、自分の健康のためです。なりふりなんてかまっちゃいられません。
撮影した写真を見て驚きました。
いや、お尻の腫れはたいしたことなかったんです。
問題は、そこに写し出された僕の肛門。
「うぎゃっ!」
思わず、悲鳴をあげちゃいましたよ。


肛門の周りに、白いものがびっしりとこびりついてます。


「なにこれ? なにこれ? カビ? それともサナダムシ?」
恐れおののきながら肛門に手を伸ばし、問題の白い物体をつかんでみると……


トイレットペーパーのカスだよ。


ペーパーのカスが肛門の周りの毛にからまっちゃってるんですね。
お風呂に入れば、簡単に取れるんでしょうけど、もう2週間以上も入っていなかったために……(涙)。
その発見をして以降、お尻の清拭をするときは、しっかり肛門周りのトイレットペーパーも拭い取るようになりました。
いや、でもホント、真っ白な肛門を見たときは、マジでびびりましたよ。


被験者の皆さん。肛門はカメラで撮影して、毎日しっかりチェックしておきましょう(笑)。